~「駆け込み節税」は通用しない? 今後の相続税対策はどう変わるのか~
近年、富裕層や資産家を中心に、行き過ぎた相続税対策に対する国税当局の監視が厳しくなっています。その象徴が、いわゆる「タワマン節税」へのルール改正です。さらに現在、注目されているのが「貸付用不動産」や「不動産小口化商品」への対応です。 そもそも不動産が相続税対策に利用されてきたのは、現預金が額面どおり評価されるのに対し、土地は路線価、建物は固定資産税評価額などで評価されるためです。さらに賃貸することで「貸家建付地」や「貸家」として評価額が下がり、市場価格と相続税評価額の差を利用した節税が可能でした。
しかし、相続直前に多額の借入れをして不動産を取得する「駆け込み節税」に対しては、国税当局が総則6項による評価否認を行う事例が増え、最高裁でも国側が勝訴しています。こうした流れを受け、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産については、従来の評価方法による大幅な評価減を認めず、取得価額を基準とした評価を行う方向で見直しが進められています。
さらに注意が必要なのが「不動産小口化商品」です。これは都心の優良オフィスビルや賃貸マンションなどを小口化し、少額から投資できる商品です。これまでは実物不動産と同様の評価による相続税対策として利用されてきました。しかし、小口化商品については、通常の貸付用不動産のような「取得後5年」という期間制限が設けられず、長期間保有していても、出資額を基準とした評価を求められる可能性があります。
こうした動きが示すのは、相続直前の形式的な節税ではなく、早期からの計画的な資産形成・承継対策への転換です。不動産についても「どれだけ相続税が下がるか」だけではなく、収益性や事業性、将来の資産価値を含めて判断することが重要になります。また、相続直前になって慌てて対策を講じるのではなく、保有資産の内容や家族構成、将来の資産承継まで見据え、時間をかけて準備することが大切です。
今後の相続税対策は、不動産だけに依存するのではなく、暦年贈与や相続時精算課税、生命保険の非課税枠など、複数の手法を組み合わせた総合的な設計が求められます。節税効果だけを追求するのではなく、資産を守りながら、次世代へ円滑に引き継ぐという視点がこれまで以上に重要になるでしょう。 税制は常に変化しています。過去の「常識」にとらわれず、専門家とともに早い段階から資産承継の方法を点検することが、大切な資産を次世代へ残すために重要です。





